ヨガインストラクターとして、慣れてくるとヨガシークエンスがマンネリ化してくる場合も。そんな時は、誘導時の言葉選びを見直してみるのもよいかもしれません。
解動学入門を主宰するヨガインストラクターのミアさんに伺います。
背すじ
「背すじ」という言葉の響きは、すーーっと気の流れがよくなるようなイメージがあり、ヨガレッスンとは相性がよい印象があります。
確かにそうですね。問題は背すじをどこだと思っているか。
便利である一方、実はあいまいな表現である
背すじという言葉には、解剖学的にどこからどこまでを指すという定義がありません。調べても「背中の真ん中のくぼんでいるところ」や「背骨が通っている辺りの筋肉」など、曖昧な説明しかないんです。
だから、背すじと言われたとき、どこを意識するのかが人によりけりになってしまいます。背中だけなのか、背中から腰にかけてなのか、はたまた尾骨の方まで含むのか、首はどうするのか、その意識の違いによって動きも大きく変わってくるんです。
背骨
「背骨」はよく耳にします。
「背骨をひとつひとつ、下から順番にねじっていきましょう。」
前屈から起き上がる時も、「背骨を下から一つ一つ積み上げて行きましょう。」といった表現です。
リアルにイメージできる分、解剖学的に正しい知識が生徒さんに必要とされる
背骨を構成する小さな骨である椎骨、ひとつひとつをうまくイメージできれば、問題ないと思いますが、それには背骨がどういう作りなのか、椎骨がどんなものなのかを知ってもらう必要があるでしょう。
言葉の観点から考えると、「背の骨」と書くので、意識が背中にいきやすいという問題があります。加えて、背中に手を回すと骨の一部分が触れます。背中で感触を確かめることができてしまうので、無意識に広背筋などのアウターマッスルばかりで動きたくなるんです。
脊柱(解剖学用語)もしくは、柱
タダーサナやバランスポーズの誘導時に、「柱が通っているのをイメージして。」と耳にします。
中心軸をしっかりとって安定させたいという思いから、使っているのかもしれませんね。でも、この言葉も漢字による影響がかなり大きいんですよ。
「柱」という言葉からくる概念のイメージが強すぎる
「背の柱」と書くため、直立不動をイメージしてしまいがち。でも、安定感=直立不動ではないでしょう。私たちの身体は安定を保ちながら、自由に動けることもできるんです。直立不動だと、そこから動いちゃいけないと思い込んで、必要以上に力が入ってしまうことがあります。残念ながらいくら踏ん張ったところで、体重が増える訳でも、足の裏が地面に接着する訳でもありませんから、横から押されれば、固まったまま倒れてしまいます。
バランスポーズで倒れやすい原因のひとつが、安定感を求めて踏ん張りすぎて、足の裏や脚、さらには身体全体の自由度を忘れているところにあると考えます。
ならば、、、
脊椎
コアな解剖学用語なので、表現としてこれがベストかどうかは微妙ですが、私は脊椎を使うようにしています。
固定概念が少ない言葉は、生徒さんの動きを自由にする
日常生活で聞き慣れない言葉ですし、漢字も一般的ではありませんから、固定概念のようなイメージによる影響が少ないのだと思われます。それ故に、最初に脊椎(頸椎・胸椎・腰椎・仙骨・尾骨)の説明をある程度する必要がありますけどね。
自分の身体の構造を生徒さんに理解してもらうのが重要
脊椎の話をするときは、「頸椎がこうなって、胸椎がこうなって、腰椎がこうなっている」とかなり詳しく説明します。それが最終的には、脊椎が椎骨という小さな骨の集合体で、バランスをとるために常に自由に動けるということへの理解を深めやすくしていると、私は思っています。
まとめ:骨の構造の理解と言葉選びで、一歩ステップアップしたヨガレッスンに
骨の構造を正しく理解する
→ヨガでは筋肉が重要視されがちですが、身体の動きそのものを形作るのは骨だから、骨の構造にも注目すべき。
言葉による力は想像以上だということを理解する。
→言葉は身体の機能面にも影響することがあるため。
動きのしくみがわかる解動学入門(陰ヨガ)
毎月第1・3火曜日 11:00 – 12:15
1月の予定
2021年1月4日
2021年1月18日
【対象】
ヨガ経験者、ヨガインストラクター、身体の動きの仕組みや解剖学に興味のある方