完成形が美しい鳩のポーズ。ヨガクラスの中で生徒さんからの要望も多いのではないでしょうか。しかし、「完成形に近づきたい!」という欲求は、太もも、腰あたりを痛める原因にもなります。ヨガインストラクターとして、生徒さんの欲求を理解しつつ、怪我のないように誘導できる事が大切です。解剖学のおさらいと効果的な準備運動(ストレッチ)を理学療法士の木村さんに伺います。
今回は座った状態で膝を曲げて爪先と肘をくっつける『鳩のポーズ』に焦点を当てて必要なストレッチをお伝えしていきます。
もくじ
鳩のポーズで大事なインナーマッスルとアウターマッスルは?
鳩のポーズは右図のように、開排した脚側に体を向けて後脚の膝を曲げ、爪先と肘をつけるポーズです。
このポーズでは後脚の太もも前側や腕を上げている側の側腹部付近が辛いという方が多いのではないかと思います。
太もも前面の筋肉は大腿直筋といって股関節および膝関節の前をまたいで付いている細長い筋肉です。
この筋肉は膝を曲げた状態で股関節を後ろに開く動きで最も伸ばされるので、鳩のポーズでも伸張性が必要になってきます。
鳩ポーズで鍵となる大きいアウターマッスルは、大腿直筋
大腿直筋は大腿四頭筋という太ももの前側に付く大きな筋肉を構成する筋肉の内の1つで、大腿四頭筋の中で唯一股関節の前面をまたいで付着する筋肉です。大腿直筋のストレッチとして、以下のエクササイズをおすすめします。
大腿直筋ストレッチ
- ・片膝を曲げた状態で身体を後ろに倒していきます。
- ・膝を曲げた側の太もも前面に伸びている感覚があればOKです。
意識するポイント
- ・曲げた膝が上に浮いてこないようにしつつ身体を後ろに倒していくことが重要です。
鳩ポーズで鍵となるインナーマッスルは、内腹斜筋
鳩のポーズでは、身体を横に倒して頭の後ろで手を組む形をとるので体幹の柔軟性も必要になります。特に開排した脚側の側腹部の伸張性が必要になってきます。
側腹部の筋肉は主に外腹斜筋、内腹斜筋から成っています。これらの筋肉は単体で働くと身体を捻る働きをしますが、同じ側の外腹斜筋、内腹斜筋が同時に働くと体を横に倒す働きをします。つまり、同じ側の外腹斜筋、内腹斜筋が硬くなると体を反対側に倒す動きが硬くなると言えます。
側腹部ストレッチ
- ・身体を真横に向けた状態で両腕を伸ばし身体を横に反らしていきます。
- ・下側の側腹部に伸びる感覚があればOKです。
意識するポイント
- ・身体を反らしていく際に上体が下を向かないように意識して行いましょう。
これらのストレッチ、エクササイズを行うことで鳩のポーズがより取りやすくなると思います!ぜひ今日のヨガクラスでポーズを取り組む前ににやってみてください!
鳩のポーズの効果
鳩のポーズの完成形は憧れの美しいポーズというだけではありません。体全体の可動性を高め、在宅勤務による長時間の座りっぱなしやうつむきがちな姿勢によって生じる体のこわばりを改善する、非常に効果的なポーズなのです。
現代人の座りっぱなしなライフスタイルでは、股関節を含む骨盤の周りの筋肉に硬さを引き起こしています。この可動性の低下と柔軟性が、一般的な腰痛やむくみ、下腹ぽっこりなどの原因となり、ひどい場合は坐骨神経痛を引き起こすこともあります。実はこの骨盤周りの筋肉のかたさは、体の局所的な影響だけでなく、呼吸の浅さなど体全体にも影響を及ぼすことがあるのです。
そのような体の不調を防ぎ、股関節の柔軟性を高め、可動域を高く保つ鳩のポーズは多くの効果があるヨガポーズだといえます。
鳩のポーズで姿勢改善
長時間座っていると、腸腰筋と大腿直筋の柔軟性を損ないます。鳩のポーズでは、片足を後ろに伸ばし、骨盤を地面に近づけることで、これらの筋肉の柔軟性を高め、さらに鍛えることが可能です。
大腰筋や大腿直筋もまた、股関節の可動域と骨盤のアライメントに非常に大きな影響を与えています。
大腰筋が何らかの理由で硬直していると、骨盤が前傾し、普段の姿勢に全影響を及ぼすため、鳩のポーズでしっかりとリセットしてあげましょう。
鳩のポーズでは、背骨を柔軟に保ち、体幹の前面の緊張を和らげます。骨盤から胸まで、背骨全体に効くので姿勢改善に効くポーズだといえます。
鳩のポーズで腰痛や肩こりを軽減
鳩のポーズは、股関節の屈筋を伸ばし、正常な腰椎のカーブをつくるのに役立ちます。また、全身の可動性を高め、体幹を活性化させながら腰の筋肉を穏やかに動かします。これら一連の動作は、鳩のポーズは腰痛を軽減しさらに肩こりを楽にしてくれます。
鳩のポーズによくある間違い(股関節と深部の回旋筋)
鳩のポーズでよくある間違いは、スネが平行(ヨガマットの短辺と)になりすぎていて、外転が不十分な状態になることです。
(梨状筋のような)お尻の深層部までしっかりと効かせるには、スネの位置を気をつける必要があります。内転筋と大臀筋の下にある深層回旋筋にしっかりと効かせるためには、スネを平行にすることよりも、どこに太ももを置けば、お尻にしっかりと効くかの方を優先に必要があります。 鳩のポーズは骨盤の周りの筋肉を伸ばすことを優先にすると、美しいばかりだけでなく、効果も高くなります。
鳩のポーズの練習は、膝の痛みやケガの予防にも役立つ
ヨガの練習でよくある問題のひとつに、股関節の可動性の不足を膝で補ってしまうというものがあります。内転筋や外転筋が固い人は、戦士のポーズのようなポーズの時に、膝が内側に倒れる傾向にあるといえます。
そのように膝が内側に傾くクセで何度もヨガの練習をしていると、膝関節を痛めるる原因になってしまいます。
股関節に十分な柔軟性があれば、膝関節を安全に保つことができるのです。そういったヨガによるケガや痛みを予防するためにも鳩のポーズは効果的です。
鳩のポーズの完成形をやみくもに目指すのではなく、体全体の連動を考え、大腿直筋や外腹斜筋、内腹斜筋のストレッチも頭に入れて丁寧に取り組むとたくさんの効果を期待できるヨガポーズだといえます。