ヨガの練習中に「あ。呼吸が深まったな」と感じた瞬間、その後が苦しくなるんです。で深く吸おうとすると余計に苦しくなってしまって、深い呼吸からどんどん遠ざかってしまうことがよくあります。ヨガでよく「受け取る」というワードがありますが、なかなか実践できません。そのメカニズムと対処法をヨガインストラクターのミアさんに伺います。
深まること自体は受動的な行為です。
「受け取る」が実践できないとのことですが、呼吸が深まっているかどうかという情報は本人の好む好まざるに関係なくやってくるもの。だから「深まったな」と感じた瞬間には「受け取る」は実践済みなんです。「本当にこれでいいんだろうか」「もっとできるんじゃないか」などと考えてしまう行為は、存在しない情報を無理にとりにいくようなもので、受動的な行為ではありません。「深めよう」という考えた時点で能動的なんです。
もくじ
呼吸を続けているとなぜ苦しくなってしまうのか?
私も呼吸で長年悩んでいるので、私の体験談をお話しましょう。
私は咳喘息持ちなんです。もう10年くらい、一度咳がでると2〜3カ月止まらないということがしょっちゅうあって、1年の半分以上、咳で悩まされていました。そして、咳喘息がひどくなったのは、実はヨガを始めてからなんです。
「ヨガは呼吸が大切」「呼吸法の練習をして」「○○呼吸はバンダを意識して」など、ヨガのレッスン中に呼吸に関して色々と言われたものです。当時の私は、そういう注意事項の全てをものすごく忠実に再現しようと「頑張って」いました。これによって、頭で脊椎を押し下げる緊張状態を無意識に作り上げ、息の通り道である気管を狭くして、自分で息苦しい状態を日常化してしまっていたんです。
つまり人(性格)によっては、ヨガの呼吸法もやりようなんですね。最終的に辿り着いた私の答えは、「呼吸を深めよう」と思うことをやめるという開き直りです(笑。
「頑張る」=自分で自分を緊張させること。
これは性格的な問題でもあるので、誘導するインストラクターもその辺りを理解して、頑張らせないですむような表現ができるのが理想でしょうね。
どうしたら、「深めようと思わなければいい」にたどり着けるのか?
「深めよう」が緊張につながるなら「深めないようにしよう」。これも逆の意味で緊張につながります。「〜しない」という否定形での行動って、実は脳はできないんです。
誰かに「〜しないでね」と言われたとき、人は「〜した」という肯定の状態をイメージしてから、それがダメなんだと二重にイメージする。それは、肯定の方向に既に動き始めてからそれとは逆方向に動かすということを、私たちの身体が瞬時に行っていることになります。それだけ余計なエネルギーを使うので、どうしても緊張してしまうんですね。
そこでおすすめしたいのが、「〜しよう」「〜しないようにしよう」の代わりに、その行為に必要な動作は何かを具体的に考える方法です。
今回の呼吸であれば、気管に滞りなく空気が出入りしてほしいので、緊張を解いて、気管に沿って存在する脊椎や肺がある胸郭が自由に動ける状態にすること。「自分には長くて広い背中があって、頭は首の上で自由に動ける」「肋骨も自由に動ける」というようにイメージする。そうすると脳がイメージした指示に従って、身体を動かし、呼吸はそれについてきてくれます。結果として「深めようと思わなくて済む」。
呼吸は「深めよう」とするものではなく、身体のバランスが整えれば自然に「深まる」ものだと思った方が行いやすいと思いますよ。
オマケ:明日使える!ヨガインストラクターのネタ帳
今回の場合でいうと、呼吸を「深めよう」という意志の時点と、「深めるんじゃなくて」という否定を考えた時点で、緊張だけが深まりそうです。
代替案として、別の考え方として身体の構造にフォーカスして、動かし方でアプローチするというのをおすすめする、って感じですね。
誘導で使うワードを見直してみよう
ヨガインストラクターは、いったん自分の誘導を見直してみるのも良いでしょう。そういうことを理解して、別の表現で誘導できるようになるというの理想でしょうね。だから、呼吸を「深めましょう」とするよりも、呼吸に関する身体の動かし方にフォーカスすることによって「呼吸が深まりましたね」とできればベター。
生徒さんに無理な緊張を強いることもない。
生徒さん自身も呼吸そのものをコントロールするというより、自分の身体はこうなっていて、どう動くことで呼吸が「深まるのか」というつもりで自分の身体を動かせばいい。
動きのしくみがわかる解動学入門(陰ヨガ)
毎月第1・3火曜日 11:00 – 12:15
11月の予定
2020年11月3日
2020年11月17日
【対象】
ヨガ経験者、ヨガインストラクター、身体の動きの仕組みや解剖学に興味のある方