ヨガインストラクター歴が長くなると、体の痛みに悩まされることが増えてくると聞きます。ヨガレッスンで同じようにやったつもりなのに、ある日急に腰が痛くなった。このような経験は少なくないのではないでしょうか。
そのような時は、今日の自分はたまたま調子悪いだけで終わらすのではなく、どうやら今まで通りの体の使い方に問題があるのでは、と自分の体の使い方と向き合ってみるチャンスです。
現在、ほとんどのヨガインストラクターが取得しているRYT200の中に解剖学が含まれます。
解剖学を習ったはずなのに、ヨガインストラクター自身が体の痛みを抱えているのはなぜなのでしょうか?
それは、RYT200では筋肉の位置や構造などの基礎的な知識は得ることができますが、ヨガポーズを作るプロセスの体の使い方(機能解剖学)の知識が抜けているからです。
ヨガポーズに限らず、日々の活動は動きの集合体です、その一つ一つの動きを「分析」し、「体の使い方」ができる知識が必要だといえます。
解動学とは、解剖学+動きの分析
解動学とは、解剖学と動きの分析を合わせた造語です。言ってしまえば単なる解剖学なのですが、ヨガを深めていく上でその動作の質を上げるための知識として、これまでのヨガにおける解剖学ではあまり触れられなかった「骨の形と関節で骨と骨がどう動くか」を中心にした知識となります。
解動学では動作の質を上げるというポイントから、筋肉についてある程度は学べますが、それほど重要視していません。
というのは、動作を自分の思う通りにコントロールしようとして筋肉にばかり気を向けると、逆に体を固めて必要以上に力を入れる状態を作ってしまうからです。
解動学がヨガインストラクターにおすすめな理由
解動学を習得すると、RYT200で習った解剖学をベースに、動きの分析を交えた安全で的確な誘導スキルを行うことが可能です。
また、動きを分析できるようになると、自分のレッスンにもより深みがでてきます。学んだ知識を自分の体で実践しているうちに、知識と実際の体の動きのズレに気がつけるようになるからです。
無意識に体を使っていた使い方に気づくことができた先に、より効率的な体の使い方の実践ができるようになるのです。
解剖学をもっと理解すれば体への気づきが増える
私たちは、日常的に無自覚に体を緊張させています。自分では気が付きませんが、精神的・物理的に関わらず何かしらのストレスがかかると、体のどこかをぎゅっとしてしまっています。
その緊張が一番現れやすいのが、頭の付け根(頭と頸椎のつなぎ目)。無意識に頭が頸椎、そして脊椎全体を押し下げてしまい、それによって体軸が固まります。このように私たち誰もが、自分自身で自由に動けない状態を作ってしまっているのです。
このような、力みがある状態でヨガポーズの練習をしていたら怪我をしたり痛みがでるリスクが高まります。そこで、まずは緊張によって力んでいる状態にあることに気づき、体の使い方をニュートラルに戻す必要があります。
ニュートラルな体の使い方とは?
ニュートラルな体の使い方とは、先程の頭が頸椎を押し下げている状態をやめるように意識的に身体を使うことです。そうすると結果として、「怪我や痛みがなく」「動きやすく」「美しく」見えます。
残念なことですが、無自覚な体の力みによって、頭の中で思い描いているような自由な動きをできない人が大半。「力み」が阻害要因となり、ニュートラルとは程遠い体の使い方の人が世の中にどれだけ多いことでしょう。
ヨガポーズは、基本的に怪我をしやすいものが多いのは事実。
ヨガインストラクターとして、また自分が怪我や痛みに悩まされないようにするには、動きの分析をRYT200で学んだ知識に乗せてあげると解決します。筋肉中心の解剖学から一歩進んで、骨格とその機能性まで掘り下げることによってニュートラルな状態は何か?を知ることができるのです。
ヨガだけでなく日常の動作にも生かせる解動学
解動学は人間が体を動かすこと(=動作)の質を上げる基本的な知識だといえます。ヨガポーズ以外にも、寝るや立つ、パソコンのキーボードを打つ、洗濯物を取り込むといったどのような事柄も役立てられることでしょう。
解動学は、ヨガの流派だけではなく、スポーツの種類や行動の種類に関係なく、動きが関わる全てのところに活かせる知識なのです。