ヨガインストラクターやヨガ歴が長くなってくると、意識的にコントロールできるように思えてくる「呼吸」。でも、ちょっと待って。意外と無理に深めようとしている事ってありませんか?今さら聞けない、呼吸に関連する身体の仕組みをヨガインストラクターのあつこさんに伺います。
私はヨガとは、瞑想や呼吸法とも言えると思っていますが、無理に深めようとしている事ってあると思います。呼吸が自然に深くなっている状態とは、心が落ち着いて身体がスムーズに動ける状態であり、それはヨガの目指すべきところではないでしょうか。無理に呼吸を深めようとすると、身体は緊張するので固くなり、交感神経が優位な状態で呼吸は浅くなります。
もくじ
呼吸を深めようと意識するせいで、身体に起こっていること。
そして横隔膜は大腰筋にも繋がっているので、呼吸=胸郭を含めた横隔膜の動きは、交感神経と密接な関係にあるんです。大腰筋は、自律神経が集まる場所にあるので、感情の動きに対して真っ先に反応する場所だから、無理に深めようとする、積極的な心の動きは交感神経が優位になるため、連動して結果的に呼吸が浅くなるとも言えます。
事実:ヨガ中に意識している呼吸は浅い状態である。
呼吸とは本来、無意識のうちに自律神経が不随意筋で調整しているものですが、意識的に随意筋で調整もできるという特徴があります。
ヨガで、吸う息、吐く息に合わせて動いているとき、それはすべて意識的にコントロールしている呼吸です。
動きの視点からみると、呼吸のための筋肉がスムーズに動ける状態だと思いますが、腹直筋などのアウターマッスルで身体が固まっていると、横隔膜や肋間筋など呼吸のための内側の筋肉は動きにくくなってしまいます。筋肉の動きと自律神経の働きは連動しているので、呼吸をがんばろうと緊張状態になると身体は固まり、交感神経が優位になります。
呼吸を深めるためには副交感神経が優位で、頭の中も静かな状態にしたいですね。
解剖学のおさらい:呼吸をしている時の身体の仕組み
呼吸を簡単に言うと、空気が、胸郭の中にある肺に入るわけですが、肺自体は筋肉のように動けないので、周りの筋肉を動かして空気を出し入れしています(70パーセントくらいが横隔膜の動きという話もあります)
動きとしては、鼻(口)から気道を通って肺に空気が入ってくると、横隔膜の中央が下に押されて肺のスペースが広がり(胸郭が膨らむ)、空気が出ていくと横隔膜、胸郭は元の位置に戻ります。
横隔膜は膜という名前がついてますが、大きな筋肉です。横隔膜の位置や大きさ、横隔膜の動きと胸郭の動きの連動がイメージ出来ると、呼吸がしやすくなることもありますよ。
横隔膜の位置を確認してみましょう。胴体を2階建ての建物とイメージすると、2階の床の部分が横隔膜です。胸郭部分が2階で、そこに肺と心臓の部屋があり、1階の水が入ってこないように、胸郭(肋骨)底部に、肋骨の形に沿って、くらげのような形の横隔膜が仕切りを作っています。
肋骨の底辺(みぞおち辺り)を手で触ってみると、少し形がイメージできるかもしれません。ちなみに1階は、床上浸水状態で臓器が重なりあうように入ってます。
胸式呼吸と腹式呼吸の違い
胸式呼吸
胸郭の膨らむ動きにフォーカスして、胸郭のまわりの筋肉をたくさん使って呼吸することで、お腹の動きが少なくなるように、コントロールしている。
腹式呼吸
お腹の動きにフォーカスして、下腹部の筋肉をたくさん使って呼吸することで、胸郭の動きを少なめにコントロールするということですね。
ワンポイント
胸式呼吸、腹式呼吸と言いますが、お腹だけ、胸だけ動くことは物理的には不可能です
身体の緊張を解くことが深い呼吸の鍵に。
自然に呼吸を深めるためには緊張を解くことが大切です。動きの視点からは、緊張によって身体を固めるアウターマッスルが働くと、胸郭が動きにくくなると知ることが大切です。鎧を着て胸郭を動かすと想像してみると、わかりやすいかもしれません。
本来、呼吸は自然に起こるものだということを頭の片隅において、呼吸のための筋肉が、順番にスムーズに動いていくことを意識してみましょう。
解剖学と身体の動きの仕組み(解動学)の理解で解決!
私のレッスン(解動学)では、骨格模型やテキストを使って、横隔膜や胸郭の動きの話をしてから、頭から脊椎の連動を意識して、先に固める動きが起こらないように誘導していきます。
動きのしくみがわかる解動学入門(ハタヨガ)
毎月 第3土曜日11:00 – 12:15
12月の予定
2020年12月19日
【対象】
ヨガ経験者、ヨガインストラクター、身体の動きの仕組みや解剖学に興味のある方