もくじ
シャバーサナとは
ヨガクラスの最後にある至福のシャバーサナ。シャバーサナの効果は深いリラクゼーションだけではなく、不眠症や頭痛の緩和、ストレスの軽減、疲労回復など、心身の修復に効果があるヨガポーズと言われています。しかし、たまに、耳にするのが「シャバーサナ中に力を抜けない」というお悩みです。確かに、「脱力してー」とヨガインストラクターから誘導されるけど、言われるほど一生懸命になってしまい、結局ガチガチのまま終わってしまうことも。力が抜けないメカニズムと力が簡単に抜けるマインドについて深堀りし、ビギナーでもリラックスしやすいやり方やヨガインストラクターが生徒をリラックスさせやすくする誘導の仕方について紹介します。
シャバーサナの効果
シャバーサナは主に、練習の最後に行われることが多く、体と心を十分にリラックスさせ、緊張を解きほぐす効果があります。ネガティブな思考や心配事、永遠に終わることがないタスクから一瞬離れることができる時間でもあります。 シャバーサナの奥深さと難しさからなかなか思ったようにリラックスができないのはよくあることですが、練習を重ねていくとたった10分で気分を爽快にして、生まれ変わったような感覚を感じることができるのです。
シャバーサナに慣れてくると深いリラックス効果を感じることができるでしょう。欧米では、ストレスに対する治療法の一つとしても知られています。 ストレス過多な状態が長く続くと、交感神経と副交換神経のバランスを崩してしまいます。心身に過剰な刺激を与え、不安や疲労、うつ、病気などを引き起こすことがあります。 シャバーサナは副交感神経を優位にさせ、「休息と消化」の反応を促します。シャバーサナで肉体をリラックスさせ呼吸を深めることで、以下のような多くの効果が期待できます。
・血圧の低下
・心拍数の減少
・呼吸がゆっくりと深くなる
・筋肉の緊張を緩和する
・代謝を上げる
・頭痛の発生を減少させる
・疲労回復、不眠症の緩和
・慢性的な緊張を和らげる
・不安やパニック発作の緩和
・全体的なエネルギーレベルの向上
・生産性の向上
・集中力
・記憶力の向上
・頭脳明晰
・自信の向上
シャバーサナで力を抜けない理由
シャバーサナで力が抜けない理由として考えられる理由のひとつが、肩や背中周りの緊張。肩は鎖骨、肩甲骨、上腕骨で成り立っていますが、「“気をつけ”が正しい姿勢である」「猫背は良くない」といった考えが普通になっていることもあって、多くの人が無意識に肩甲骨を後ろに引いて背中の方に寄せた、緊張状態を常に作っています。
そして、シャバーサナのような仰向けでも同じように緊張状態が続けている人を多く見かけます。
シャバーサナ中の体への意識の向け方
肩甲骨は肋骨に沿うようにして付いていますが、その肋骨や、肋骨が構成する胸郭を輪切りにして上から見ると楕円形です。つまり私たちの胴体は丸いということ。だから、仰向けを真横から見ると、肩甲骨は床と平行にあるのではなく、肩の先が浮いたように見えるはずなんです。
シャバーサナで力が抜けないとき、肩甲骨や肩の状態はどうなっているか確認してみてください。肩甲骨が背中の方に寄って、肩の先が床にピッタリ着いていませんか?
シャバーサナのやり方
①足を自然な位置に置く。
足を左右に開くことができるように、足をまっすぐ伸ばしているのを手放します。
②一度、両腕を胸の前で抱きしめる。
③片腕ずつ、肩→肘→手の順に床に降ろす。
④呼吸を自然に整える。
⑤自然な呼吸を心がける。
意識が散漫になったら、呼吸に注意を向けてもかまいませんが、呼吸を深めるのではなく、ただそれに気づくようにします。 終わりの時間になったら、まずは深呼吸。そして、手足の指を動かし 、ゆっくりと体を目覚めさせます。
⑥両腕を頭上に伸ばし、手から足まで全身を伸ばします。
⑦膝を胸の前で抱いて、目を閉じたまま片側に倒れる。下の腕を枕にして、胎児の姿勢で数回休みます。
⑧両手を支えにして、座った姿勢に戻します。
③のときに無理に床に腕を伸ばして、手のひらを上に向ける必要はありません。落ち着かないようなら、手をお腹の上に乗せた方がいいでしょう。それだけでも肩が床から浮いて、余計な緊張をすることなく、肩関節は本来の位置に戻ります。
まずは、肩まわりの緊張を解くことがポイントです。それに連動して腰の位置も自然とニュートラルな位置に戻ってくれて快適度が増します。
ビギナーへのヒント
じっとしていなくても大丈夫
シャバーサナは最も難しいヨガのポーズだと言われています。10分間何もしないでじっとしていると、体のあちこちが気になりだしてもぞもぞと動きたくなるのは、よくあることなので心配はいりません。 例えば、つま先から頭まで体をスキャンして、体の各部位の名前を言ってから解放してみるのはいかがでしょう。 ヨガポーズでは普段使わない部分をたくさん動かします。その新しい情報を受取る時間と考えるとシャバーサナの10分間はあっという間に終わってしまうことでしょう。
脳内おしゃべりが止めようとしない
これもよくあることです。体がリラックスしているときでも、頭の中は次のスケジュールやメールの返信やSNSのチェックなど、常に忙しく動いています。
そのような脳内おしゃべりを「止めようと頑張ると」余計にうるさく感じるでしょう。
無理に押さえようとするのではなく、自分の思考に気づく時間と捉えてみましょう。
シャバーサナでもっとリラックスしてほしい!を叶えるポイント2つ【ヨガインストラクター編】
①ヨガインストラクターは肩の位置を正しく理解する
「脱力」は筋肉が緊張していないことですが、言い換えれば骨が本来の位置に戻るということだとも言えます。例えば、肩の位置は鎖骨の延長にあって、肩を上げたときをプラス、下げたときをマイナスとするなら、脱力状態はプラマイ0の位置と考えます。
だから、ため息つきながら肩をさげることが脱力だと思っている人にとっては、少し肩が上がっているように感じるくらいが、実は本来の骨の位置で脱力していることになります。マイナス方向に必要以上に力を入れていれば、肩を上げているときとは逆の方向で疲れてしまうわけです。
②シャバーサナの誘導の言葉選びを丁寧にする
シャバーサナでリラックスを促す方法の一つとして、鎖骨や肩辺りに両手で圧をかけたり、ふくらはぎの辺りをぎゅーっと押さえる等のプチマッサージでリラックスを促す場面を見かけます。もちろん、この方法でも有効ではありますが、的確な表現を使えば、言葉だけで脱力を促すことができるのです。
誘導するヨガインストラクターが身体の構造を知っているというのが大前提で、本来の位置に骨が戻るような誘導ができるといいでしょう。自分が言っている言葉と全く同じイメージで万人が捉えてくれるわけではないので、自分が使っている言葉や見せている動作が、生徒さんにどう影響するかを心にかけておく必要はあります。
例えば、ヨガインストラクターがあまり大きくため息をつくと、生徒さんはそれ以上に“頑張って”ため息つこうとするものです。ため息をつくこと自体は問題ないですが、それが過ぎると、必要以上の行動につながりやすいのではないでしょうか。
「脱力するためにはどう動くか」というプロセスを考えること。そして、それを言葉としてどう表すかを実践する方が誤解を招かずに誘導できると思います。
シャバーサナの誘導の言葉でNG表現2つ
体がマットにしずんでいきます
シャバーサナの誘導でよく聞く表現の1つですが、無意識にマットに背中を押し付けたり、肩甲骨を引いて寄せるような背中の緊張を作ってしまうことがあるので、注意は必要です。
リラックスの比喩的なイメージを通して、生徒さんを脱力させたいという意図はわかりますが、「沈む」という上から下に重力がかかるような言葉は、時として「自分で重力をかけよう」と気づかないうちに力を加えてしまうことがありますね。仰向けに関わらず、立っているときや座っているときでも、上から下への重力とは自然とそうなるものと思いがちですが、無意識に自分でそういう状態を作っている場合も多いです。
「脱力」して〜
「脱力」も勘違いしやすい難しい概念だといえるでしょう。例えば「大きく息を吐きながら脱力して」と言ったとき、「ハア〜」と大きくため息を吐きながら、必要以上に肩をさげる場面をよく見かけます。前述の「脱力は骨が本来の位置に戻るプラマイ0の状態」から見ると、「脱力」しようと体に力が入ってしまい、本来のリラックスとは逆の方向になっている可能性があります。
シャバーサナの効果を高める誘導の言葉サンプル
①頭は前の壁の方、脚は後ろの壁の方に伸びていきます。
仰向けになっている頭の方を前、足の方を後ろとします。体を床に押し付けようとする動作を防ぐことができます。
②両手を胸の前で軽く抱きしめましょう。
「脱力して」を置き換える事ができる言葉です。一度「抱きしめる動き」で背中の緊張を防ぐことによって「自然に脱力を促す」ことができます。
③右(左)の腕を肩、肘、手の順に床に降ろします。
動きに注目させる事によって、緊張を最小限に留めることができるのです。