スタジオでのレッスンからオンラインでのヨガレッスンに生徒さんもヨガインストラクターも慣れて来た頃だと思います。そして、今後も定着されると予想されるでしょう。
そうなってくると、今までは気にならなかったヨガインストラクターとしてのスキルの課題。その一つに、アライメントの誘導の差が挙げられます。
もくじ
臨場感があるスタジオレッスンで培った表現そのままでは、伝わらない
オンラインレッスンは、対面レッスンと違い、ヨガインストラクターがアジャストできません。さらにヨガポーズによっては、生徒が画面を見られないシーンも出てきます。
生徒がヨガポーズを取っていて画面を見ることができず、インストラクターの言葉だけが頼りの場合はなおさらでしょう。また、対面によるスタジオレッスンとオンラインレッスンでは当然ながら臨場感が違います。この臨場感の違いというのが結構なクセモノなのです。
スタジオレッスンのときはポーズを取りながら、そのポーズを補足的に言葉で説明するだけでも、臨場感に助けられて、十分に通じていたものが、オンラインレッスンでは通じなかったということもあり得ます。
ヨガの経験があって、ポーズのことをよく知っている生徒なら「次に○○のポーズだ」とおおまかなガイダンス程度に捉えているくらいかもしれませんが、オンラインレッスン参加者の多くは、画面の向こうにいるインストラクターの誘導に忠実に動こうとするものです。
ですから、画面の中で何が行われているかをはっきりと把握できないと、生徒側がどう動けばいいのかわからずに迷ってしまいます。
しかも、この「迷い」が怪我を誘発する可能性を秘めていると考えます。オンラインレッスンを開催するヨガインストラクターは今まで以上に「誘導の重み」を考える必要があるといえます。
①誘導の言葉をもう一度見直そう
ヨガインストラクターがこの臨場感の差を把握しきれていなかったり、ポーズのアライメントという結果にばかり囚われていたりすることも多いようです。インストラクター本人はこれから行うポーズで重要となるアライメントを理解しているので、一足飛びでそのアライメントをできるだけ簡潔に説明したくなってしまう気持ちはわかります。
しかし、それでは、これからどんな動きを経てどういうポーズをするのかを知らない生徒側からすれば、非常に言葉足らずになってしまうでしょう。
例えば、オンラインレッスンで三日月のポーズから捻りのポーズに移行するときに、次のような誘導を言ったとします。
①「三日月のポーズです」
②「次に立てている右膝の向こうへ左手を置いてください」
③「そうして捻りを深めましょう」
三日月のポーズで斜め上や捻ろうとして画面とは別のところを見ているときに上述の言葉だけでは、ポーズのために取るべき行動の具体性が見えてくなくて、画面の向こうでは右往左往してしまっているかもしれません。
右膝の向こうと言われても、膝の周辺である前後も外側も左手にとっては向こうです。また、膝から床までの高さもあるのでそれも考慮すれば、左手を置くべき一点となる場所、その場所へ左手を導く軌跡は幾通りも考えられますよね。
このように、対面レッスンでは、そこまで問題ではなかった「動きの過程(プロセス)」の説明が抜けていると、オンラインでは、ヨガインストラクターの動きが見えづらい分、生徒側は迷いがでてくるのです。
ヨガインストラクターも、その隙間を埋める言葉が見つからなければ、結果、「向こう」といったどこを指しているのかわからない言葉しか出てこないという状況に陥ってしまうのです。
それでは、どうしたらいいのでしょうか?
②「動きの過程(プロセス)」をより認識するようにしよう
ヨガレッスンのシークエンスの中では、アライメントから次のアライメントに至るまでには複数の動作があって、それらが順序立ててヨガインストラクターが誘導すれば、生徒達は、迷うことなく、身体が動けるのです。
でも残念なことに、ほとんどのヨガインストラクターは、複数の動作と順番という「動きの過程(プロセス)」)に対して無意識な動きになっているといえます。
どのようなポーズであっても、身体を動かすには細かいプロセスがあって、それらをどれだけ意識できるかがポイントになってきます。
スタジオでの対面レッスンとオンラインの違いを、ヨガインストラクターは理解しよう
スタジオレッスンとオンラインレッスンの臨場感の差は参加者の理解力にも影響を与えますが、これはヨガインストラクター自身にもいえることです。
オンラインでのレッスン提供は、対面でのレッスンよりも、インストラクター側の精神的・時間的余裕が顕著に伝わっています。
ヨガインストラクターは、何よりも自分が無理をしていないかと自分のことを気遣いましょう。自分のために気遣う時間をとって、余裕のある自分を参加者に表現すれば、自ずと参加者の余裕にも繋がります。
オンラインだと「無の時間」が怖くなることもありますが、余裕がある人は「無の時間」さえ意味があるように見えるものです。ヨガインストラクターは、意識的に心の余裕をレッスン前に作ることができれば、対面レッスンとの違いをはっきりと認識することができ、誘導の言葉選びも変わってくるはずです。